Exhibition

鈴木星亜「Surface 2014 – 2020」

2020年6月 6日 - 6月28日

鈴木星亜
水面 14_01
2014年
キャンバスに油彩
194.0 x 390.9cm

Maki Fine Artsでは6月6日(土)より、鈴木星亜 個展「Surface 2014 – 2020」を開催します。Maki Fine Artsでは初めての個展となります。是非ご高覧下さい。


「波紋と皺〜鈴木星亜の絵画〜」

上野の森美術館 学芸員 岡里 崇


 鈴木星亜は1986年東京生まれ。2008年より本格的に発表を始め、トーキョーワンダーウォール、シェル美術賞展などに出品したのち、VOCA展2012でVOCA賞を受賞している。本展には2013年から2019年までの作品が出展され、鈴木の作家としての足取りを辿ることができる。

 鈴木は当初、写真を基にして絵画を制作していた。画面から自らの記憶にないものを排除しようと試みたが、写真に引きずられてうまくいかなかったという。そこで2010年から、目に見える風景を文字でメモして、それに基づいて描く手法をとっている。

 これまで鈴木は水面を多く描いており、今回のメインとなる作品も《水面14_01》である。ここに描かれているのは、作品を最初に展示した第一生命日比谷本社前に広がる皇居のお堀である。画面上部の石垣と水面との際が極端なカーブで誇張され、また左下には木の幹が画面を斜めに横切っていて、その両者が緑に覆い尽くされそうな画面の中でアクセントとなっている。大きな割合を占める緑色の水面が印象的な作品だが、画家の関心はその波紋にあるようだ。彼の作品をいくつも見ると、波紋は時に蓮の葉や木の葉の緑と共鳴し合い、時に山の稜線と似通った描線となっている。

 今回の個展ではカンヴァスに皺が寄った作品がいくつか出品される。この皺と描かれた波紋を写真で見ると似通って見える。しかしその構造上の働きは全く異なっている。皺があると当然描きにくくなるが、引っかかりのないフラットな画面に描いていると支持体の存在が希薄に感じるというこの画家は、色の際を皺の凹凸に合わせたり、逆にあえて皺の凹凸に抗って筆を進めたりと、描く際の障害になる皺を積極的に利用している。

 鈴木は、滑らかな二次元の表面にはない凹凸という抵抗感を導入して、絵画の素材感や物質感を確かめる。同時に三次元の世界を二次元の平面上に無理やり押し込めている不自然な絵画世界に、三次元性を取り戻そうと試みている。

鈴木星亜 / Seia Suzuki
1986 年東京都生まれ。2012 年多摩美術大学大学院美術研究科博士前期(修士)課程絵画専攻油画研究領域修了。2012 年 VOCA 賞受賞。実際の風景を文章で書きとめ、それをもとに絵を描くという手法で制作し、ものを見て、描くという絵画のプロセスの中で何がおこっているのかを探求している。近年の主な展覧会として、グループ展「TOKYO☆VOCA」(2020年 / 第一生命ギャラリー)、個展「絵は私の身体を通して世界を見る」(2018 年 / ギャラリー16)、個展「project N 62 鈴木星亜」(2015 年 / Tokyo Opera City Art Gallery 4F corridor)、個展「水面」(2015 年 / 第一生命ギャラリー)など。