Exhibition

加納俊輔「Combined City」

2023年11月4日(土) - 12月3日(日)

Maki Fine Artsでは、11月4日(土)より12月3日(日)まで、加納俊輔の個展「Combined City」を開催します。Maki Fine Artsでは7回目、約2年半ぶりの個展になります。加納の作品は、写真を通じて、画面に複数の階層を作ることで、「見ること」への感覚を問い直します。写真を複数回撮影して多次元のレイヤーを作り、画面を圧縮する「layer of my labor」や、印画紙を透過させ、表と裏を同時に見ることを実現化した「Pink Shadow」など、ものの前後関係や奥行きが曖昧になるような、イリュージョンを生み出す作品を発表してきました。

今回の個展で発表する新シリーズ「Combined City」は、これまでとはアプローチが異なり、写真によるコラージュに近いものです。ひとつの対象を異なる視点から撮影し、画面上で複数の写真を組み合わせる手法で制作されています。対象を複数の視点から同時に見ることを具体化した「Combined City」は、加納が北九州市に旅した際に見た光景が、アイデアの原点になりました。人口規模の大きい5つの市が同等に統合した北九州市は、歴史的にも稀な合併とされ、小が大に編入されるのでなく、均一のものが複数共存する、「合体都市」としてのイメージが作品に繋がっています。画面を横断し、交差する曲線は、地理的な境界線を想起させますが、隣り合うピースが分断されることなく、断続的に繋がり合いながら、新しい次元の風景を構成しています。

道になにかが落ちている。遠くにキラっと光るものを見つけ、近づいてよく見るとたんなる石で、なんとなく手に取って眺めてみて、また道に置いてその場から立ち去る。遠くから目を細めて見たり、近づいて凝視したり、ただ視界に入っているだけだったり、たんなる道端に落ちていた石に対しても、時間や距離の変化とともに複数の視線が存在する。

「Combined City」は、一つの対象に対して複数の視線で撮影された写真を解体し、それらを再構成することで複数の視線を同時に眺めることを試みている。

一つの対象に向かう複数の視線を統合すること、または一つの対象に向かうその時間を一気に圧縮することで立ち上がる状態を見てみたいと思う。

加納俊輔

加納俊輔 | Shunsuke Kano
1983年大阪生まれ。2010年 京都嵯峨芸術大学大学院芸術研究科修了。近年の主な個展に、「森を見て木に迷う」(2023年 / 千總ギャラリー)、「サンドウィッチの隙間」(2021-22年 / 京都市京セラ美術館 ザ・トライアングル)、個展「滝と関」(2021年/ Maki Fine Arts)、「圧縮トレーニング」(2021年 / clinic)など。THE COPY TRAVELERSのメンバーとしても活動。