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池田衆「Traces of Travel」

池田衆 | Shu Ikeda
BerlinerDom, Berlin
2021年
photographic collage, mounted on acrylic
70 x 150 cm

Maki Fine Artsでは2月5日(土)より3月6日(日)まで、池田衆 個展「Traces of Travel」を開催いたします。池田衆は写真を切り抜き、独自の形や空白を画面上に作り出したり、切り抜いた要素をコラージュする手法にて、絵画と写真の間を行き交う作品を発表しています。これまでに、植物や水面などの自然風景や、オリンピック前の都市開発が進む東京の姿を捉えた風景、または果物や花を配置した静物などを作品の題材としてきました。
Maki Fine Artsでは6回目の個展となる本展での新作は、池田が実際に旅をした地で撮影した写真を用いて制作されたものです。ベルリンやパリ、ヘルシンキやロンドンなど、旅の記録として残された写真が、卓越したカッティング技術と重層的に施されたコラージュによって、全く新しい光景へと生まれ変わる瞬間を見ることができます。清々しく、その研ぎ澄まされた画面からは、コロナ禍で失われた時間の感覚を取り戻すような、池田自身が作品に向き合った痕跡を感じられます。是非ご高覧ください。

旅に行く前のイメージと現地での体験や実感したことは多くの場合、隔たりがあります。旅をするということは今まで見たことがないもの、体験したことがないことを実感することで、見慣れたものが急に新鮮に感じたり、当たり前と思っていたことが、実はそうではないと気付くことが多くあります。
日常から離れてそうした新たな発見や驚き、異文化や考え方の違いに気付くことは旅の醍醐味であり、アート作品を見る感覚に似た何度も体験したくなる魅力をもっています。

2020-22 年は新型コロナウィルスの影響で日常の様々な事柄が制限されました。とりわけ海外旅行は難しく、旅行をして写真を撮るという当たり前だった楽しさが無くなったこと痛感しています。
今回の展示では過去に観光として撮影した写真をベースに作品をつくっています。数年前が遠い昔のようであり、このような状況で旅行写真をたどり制作することは何か意味があるように思えました。

「Traces of Travel 」と題された本展では、旅の痕跡としての写真を使って、光跡や筆跡、破片や余白など何かの存在を示す痕跡が作品の多くに含まれています。
何かが無くなったときに、そのものの大切さや本質が見えてくるように、写真を切り抜き、要素を削ることで写真とは何か、イメージとは何かということがみえてくるのではないかと模索しています。
旅から帰った時、あるいはアート作品を鑑賞した後、それまでの日常が少し違った角度で見えたときそれは良い体験をしたといえるのではないでしょうか。

池田衆

池田衆 | Shu Ikeda
1979年広島生まれ。2004 年東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻 卒業。現在、東京都在住。自然や都市風景を主なモチーフとして、写真を切り抜き、独自の形や空白を画面上に作り出したり、切り抜いた要素をコラージュする手法にて、絵画と写真の間を行き交う作品を発表。これまでの主な展覧会として、個展「Object and Image」(2019年、Maki Fine Arts)、「Sight」(2018年、 六本木ヒルズA/Dギャラリー)、 グループ展「アートがあればII – 9人のコレクターによる個人コレクションの場合」(2013年、東京オペラシティアートギャラリー)など。

池田衆「Object and Image」

池田衆
Pomegranates #1
2019年
cut-out photograph, mounted on acrylic
27 x 38 cm

Maki Fine Artsでは5月25日(土)より、池田衆の個展「Object and Image」を開催します。弊ギャラリーでは約2年半ぶり、5度目の個展となります。本展での新作は、美術史における「静物画」をモチーフに、オブジェクト(物質)とイメージ(画像データ)との関係性について、批評的な視点を基に制作されました。池田衆はこれまで自然や都市風景を主なモチーフとして、写真を切り抜き、独自の形や空白を画面上に作り出したり、切り抜いた要素をコラージュする手法にて、絵画と写真の間を行き交う作品を発表してきました。新作は恣意的な要素を控えつつ、写真の裏面を用いたり、反転・対比といった構成的なアイデアが取り入れられています。進化を続ける池田衆の新作、是非ご高覧ください。

池田衆 / Shu Ikeda
1979年広島生まれ。これまでの主な展覧会として、個展「Sight」(2018年、 六本木ヒルズA/Dギャラリー)、 グループ展「アートがあればII – 9人のコレクターによる個人コレクションの場合」(2013年、東京オペラシティアートギャラリー)など。Maki Fine Artsではこれまで4度の個展(2017年「Reverse/Rebirth」、2015年「In Between Places」、2012年「From the Bloom to the Blank」、 2011年「Another Yesterday」)を開催。2017年には、いけばな小原流の月刊会員誌「小原流挿花」の表紙(全12回)に作品が掲載された。

静物画は美術史における伝統的ジャンルのひとつです。
主に人生や虚栄の儚さ、死を連想させるモチーフなど暗喩的表現を内包しつつ、実物そっくりの精巧な写実的表現に重点が置かれていた17世紀西洋絵画でひとつのジャンルとして確立してから、シャルダン、セザンヌ、モランディなどの画家やキュビズム、シュールレアリスムなどの多くの作品に扱われてきた主題です。
その流れの中で19世紀後半から主題の意味や再現性にとらわれず、画面構成が重視されていき20世紀初めにピカソとブラックの静物画が起源となったのがコラージュという手法でもありました。
これまで私は主に自然や都市など風景写真を撮影し、その写真を切り抜いたり、コラージュする手法で制作をしてきましたが、対象物を配置、構成するという意味でも、歴史的な流れからみても静物画はコラージュと密接な関係にあり、私の作品の源泉、根幹にあると思ったのが今回の個展のきっかけです。
今回の個展はそのような過去の静物画を参照にしたり要素を抽出しながら、切り抜きやコラージュという手法と融合させ自分の表現の現在地として示しています。そして写真を切ることで、絵画/写真、物質/イメージ、表面/内面、などの要素を顕在化し、対立する相互を共存させるような画面を再構成しています。
大量の加工された写真がスクロールされる現代において、錯覚しているイメージや希薄になった物質性やリアリティーを立ち止まって意識することで、改めて”みる”ことの驚きや面白さを感じられるのではないかと思っています。

池田衆