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益永梢子「その先の続き」

益永梢子
近づいてみるとそれは花畑ではなくて
2023年
木製パネル、キャンバス、アクリル絵の具、ジェルメディウム、木炭
73 x 73 x 5.5 cm
益永梢子
一応は名付けられた時間の境目にいる
2023年
木製パネル、キャンバス、アクリル絵の具、ジェルメディウム
37 x 35 x 4.5 cm

Maki Fine Artsでは3月18日(土)より4月23日(日)まで、益永梢子 個展「その先の続き」を開催いたします。Maki Fine Artsでは初となる個展、是非ご覧ください。

「出来事としての絵画」 沢山遼(美術批評家)

 益永梢子の制作において、絵画は描かれるのではなく、造形される。彼女の絵画には、画家に無条件に与えられる、所与の条件としての支持体というものが存在しない。だからそこでは、キャンバスという支持体があり、その上にイメージを載せる、という一般的な絵画のありようは、かぎりなく遠ざけられている。

 むしろ、益永の制作において絵画の基底的な面となる支持体は、彫刻家があつかう素材のように、可変的、可塑的な操作対象としてある。だからイメージは、支持体の物質的な可塑性その厚みとともに、、、、生起する。絵画は、展開・拡張され、幾重にも積層し、折りたたまれ、湾曲し、ねじられ、めくられ、たわみ、剝がされ、貼りつけられる。絵画は、こうした一連の動的な語彙で形容しうる、諸々の変形作用を受け入れることで造形される。彼女の絵画において、支持体の造形とイメージの生成が同時、、、であることは、その論理的、構造的な帰結である。

 絵画は、そのような変形作用を行使する画家の挙動、行為をたえまなく記録するとともに、画布もまた、キャンバスの木枠の窮屈さに耐えかねるように枠から開放され、みずからの布としての変形作用を全面化する。自力では物理的に自律できない布は、幾重にも屈曲し、ときに時間とともに変形したわむことで、そこに加えられる力学的な力が知覚される。絵画はそこで、画家のさまざまな挙動、素材の物質的な可塑性=変形可能性、重力などの力が分離不可能な状態で交錯する力学的な場=出来事としてある。進行形の出来事を記録する場(トポス)としての絵画が開設される。

 そのとき、益永の絵画は、名詞ではなく動詞的なものへと変わる。彼女の手がつくりだすのは、見る者の眼の前で生成・展開する動的な対象としての絵画であるからだ。それは、周囲の空気や風を受け入れるようにひるがえり、みずからの呼吸のリズムとともにかすかに振動し、ひっそりと息づいている。

益永梢子 | Shoko Masunaga
1980年 大阪生まれ。2001年 成安造形短期大学造形芸術科卒業。2018-2019年、文化庁新進芸術家海外研修制度によりニューヨークに滞在。絵画を起点とし、多様な手法を用い制作を行っている。周囲の環境・空間との関係性を重視する作品群は可変的で置換可能な性質を持つ。近年の主な展示として、個展「editing」(2022年/nidi gallery)、個展「replace」(2021年/LOKO Gallery)、グループ展「Ordinary objects」(2020年/Maki Fine Arts)、個展「Box, Box, Box」(2019年/Cooler Gallery)、「クリテリオム93 益永梢子」(2018年/水戸芸術館現代美術ギャラリー)、「VOCA展2017」(2017年/上野の森美術館) など。

Ordinary objects – アレックス・ダッジ / 益永梢子 / 荻野僚介 / 末永史尚

アレックス・ダッジ
Soft Power for Hard Problems (Nike) I
2020年
oil on canvas
38 x 45.5 cm

Maki Fine Artsは、アレックス・ダッジ、益永梢子、荻野僚介、末永史尚によるグループショー「Ordinary objects」を11月27日(金)より12月20日(日)まで、開催いたします。

身近にありふれたものを作品の題材として、それぞれ異なるアプローチで絵画を考察する4名のアーティストを取り上げています。是非ご高覧下さい。


アレックス・ダッジ | Alex Dodge
1977 年アメリカ合衆国コロラド州デンバー生まれ、現在ブルックリン(ニューヨーク)と東京を拠点に活動している。近年の主な展示に、個展(2020年 / Klaus von Nichtssagend)、個展「情報のトラウマ」(2019 年 / Maki Fine Arts)、「Programmed: Rules,Codes, and Choreographies in Art, 1965-2018」(2018-19 年 / ホイットニー美術館)、個展「Whisper in My Ear and Tell Me Softly」(2018 年 / Klaus von Nichtssagend Gallery)など。ニューヨーク近代美術館、ホイットニー美術館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館などに作品が収蔵されている。


益永梢子 | Shoko Masunaga
1980年 大阪生まれ。2000年 成安造形短期大学造形芸術科洋画クラス卒業。絵画を起点とし、多様な手法を用い制作を行っている。周囲の環境・空間との関係性を重視する作品群は可変的で置換可能な性質を持つ。近年の主な活動:文化庁新進芸術家海外研修制度によりNARS Foundation主催のInternational Residency Programに参加 (2018-2019年 / Brooklyn New York) 、「Box, Box, Box」(2019年 / Cooler Gallery, Brooklyn New York)、「クリテリオム93益永梢子展 : Daily Routine」(2018年 / 水戸芸術館現代美術ギャラリー第9室)、「VOCA展」(2017年上野の森美術館)、「ルランタット パダンパダン」(2016年 / gallery yolcha)、「platform」(2016年 / LOOP HOLE)、「Sabbatical Company#1 夕方帰宅してみると」(2016年 / milkyeast)、「ポストにこれが届いていた」(2015年 / ETNA&IONIO)、「Abstract Butter at HAGISO」(2015年 / HAGISO)、「三つの机のあるところ」(2015年 / Art Center Ongoing)、「メディウムの条件 ART CRITIQUE n.04刊行記念企画」(2014年 / HAGISO)など。


荻野僚介 | Ryosuke Ogino
1970年埼玉県生まれ。1993年明治大学政治経済学部卒業、1998年Bゼミスクーリングシステム修了。 色彩と形態の関係性を考察しながら、主に色面を用いた絵画作品の制作を行っている。近年の主な展覧会として、「引込線 / 放射線」(2019年 / 第19北斗ビル)、「MOT コレクション ただいま / はじめまして」(2019年 / 東京都現代美術館)、「絵画の現在地」(2018年 / 札幌大通地下ギャラリー500m美術館)、個展「(-ness)」 (2018年 / Maki Fine Arts)、個展「ハロー」(2016年 / Gallery&cafe see-saw)、個展「個点々」(2015 年 / switch point)、「ペインティングの現在 -4 人の平面作品から-」(2015年 / 川越市立美術館)、個展「cannot see clearly」 (2014年 / gallery COEXIST TOKYO)、「New Vision Saitama 4 静観するイメージ」(2011年 / 埼玉県立近代美術館)など。


末永史尚 | Fuminao Suenaga
1974 年山口生まれ。1999 年東京造形大学造形学部美術学科美術 I 類卒業。日常見ているものや展示空間に関わるものからピックアップした視覚的トピックをもとに絵画・立体作品を制作している。近年の主な展覧会として、個展「ピクチャーフレーム」(2020年/Maki Fine Arts)、「アートセンターをひらく (第 I 期 第II期)」(2019 -2020年/ 水戸芸術館 現代美術ギャラリー)、「百年の編み手たち – 流動する日本の近現代美術 – 」(2019 年/東京都現代美術館)、「MOTコレクション ただいま / はじめまして」(2019年/東京都現代美術館)、個展「サーチリザルト」(2018 年/ Maki Fine Arts)、「引込線 2017」(2017年/ 旧所沢市立第2学校給食センター)、「APMoA Project, ARCH vol. 11 末永史尚「ミュージアムピース」(2014 年 / 愛知県美術館展示室 6)、「開館 40 周年記念 1974 第 1部 1974 年に生まれて」(2014 年 / 群馬県立近代美術館)など。

Artist

益永梢子 – ナナメを通る

2023年7月13日 – 30日
千年一日珈琲焙煎所 
千年一日珈琲焙煎所CAFE

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