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アレックス・ダッジ 「A Way With Words」

Maki Fine Artsでは、4月6日(土)より5月12日(日)まで、アレックス・ダッジの新作による個展 A Way With Words を開催いたします。Maki Fine Artsでは3回目の個展で、2021年以来、約2年半ぶりになります。本展覧会は2部構成になり、Maki Fine Artsでの展覧会をPart 1、銀座蔦屋書店 GINZA ATRIUMでの展覧会をPart IIとして開催致します。

20年間にわたり、アレックス・ダッジは革新的な技術とプロセスによって、絵画という行為を再定義し続けてきました。さまざまなソフトウェアとコンピューターコードを駆使することにより、その作品はヴァーチャルとフィジカルの世界を横断します。さまざまな版画のテクニックからインスピレーションを得た独自のアプローチで、レーザーやその他のCNC加工よりカットされたステンシルを使用し、油絵の具の厚い層で、イメージをキャンバスに変換しています。ダッジの作品は、高度なデジタルツールと、伝統的技術とメディアを使った丹念な手仕事の融合によるものです。その技術的なプロセスに反映されているのは、テクノロジーそのものと、それが人間の経験をどのように再定義し続けるかという、長年にわたるテーマです。

本展覧会の新作は、言語とAIの接続性を総合的なテーマとしています。近未来、そして遠い未来を予感し、深く思索しながらも、作品はユーモアと軽快さを交えた遊び心に満ちています。

A Way With Words

パート1: Maki Fine Arts(4月6日 – 5月12日)
パート2: GINZA SIX 銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM(4月26日 – 5月15日)

人間の経験は、ある本質的な矛盾を孕んでいる。私たちの最も深い感情や洞察は、しばしば言葉で表現しがたく、言語の手の届かないところにある。それにもかかわらず、このデジタル時代においては、言語、特にテキストが、私たちをつなぐ不可欠な手段となっているのだ。

言語は拡張可能で共有可能な仮想空間を人々に提供する主要な技術である。印刷された本、歌詞、コンパイルされたコードなどは、どれもその例だ。しかし、言語には限界もある。言語のみでは実現不可能な方法で人間の経験を拡張することを可能にするのが、たとえば絵画といった視覚的形式との融合だ。今回の展覧会では、アレックス・ダッジは自身の作品における確立されたテキストの使用方法を拡張し、独自のユーモアと形式的な遊びを活かしながら、言語が持つ命題性、手続き性、詩性、視覚性、触覚性などの様々な側面を探究している。ダッジは「A Way With Words」において、その表現力を称えると同時に、しばしば滑稽なまでの不十分さをも露わにする方法でテキストを扱っているのである。

今回の展覧会は、私たちの文明が言語とともに新たな未知の領域に踏み出そうとするこの時代に開催される。ChatGPTやGeminiなどのツールに見られるように、計算力、統計モデリング、アルゴリズム処理の進歩は、テキストとの関わり方に革命的な変化をもたらした。本来、視覚的処理のために開発された​​GPU(画像処理装置)が、いまやニューラルネットワークや大規模言語モデルを駆動し、私たちの言語世界を抜本的に改変している皮肉な状況だ。この技術的飛躍は、西洋の哲学・言語学の伝統において、ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインや言語学者のエドワード・サピア/ベンジャミン・ウォーフらが展開した議論を改めて呼び起こすものである。現実を定義し形作る上で言語が果たす中心的役割という彼らの議論の主題は、私たちがテキストとAIを融合して人間の経験を生成するにつれ、新たな意義を獲得しつつある。一方、東洋思想、特に仏教と道教では、言語は「現実を理解するための限定的な手段」として位置付けられている。仏教における座禅や道教における無為自然の追求に見られるように、言語を超越したより深い直接的な現実理解に到達することを目指しているのだ。銀座 蔦屋書店のGINZA ATRIUMは、書籍という形で言語を讃える聖域だ。本展の第二章にとって、まさにふさわしい会場と言えるだろう。

ダッジの絵画は、こうした哲学的論争を視覚的に表現したものである。歌詞や詩からの一節がふわふわした布製の枕のような文字へと姿を変え、幾何学的にタイリングされた空間に佇みながら、人体を思わせる存在感を醸し出している。数値的かつ計算論的にシミュレートされたこの空間は、(気怠げでぐにゃぐにゃして不完全な枕という姿をとった)言語が住まう理想的世界の表象なのだ。アルゴリズムによって生成された空間の完璧さと、ダッジの作品に描かれる有機的で自由奔放かつ不完全なものとしての言語との対比は、実に鮮烈だ。

本展では、新しい技術が芸術表現をどのように再定義するかを考察する。写真の登場によって絵画が解放され、新たな次元への挑戦が始まったように、テキストとAIの融合はこれまでにない芸術の地平を切り拓き、創作に刺激を与えている。ダッジの20年にわたる作品は、こうした探究の証であり、バーチャルシステムと絵画の交差点を検証し続けてきた。

「A Way With Words」展は、鑑賞者を言語、テクノロジー、視覚的形式の間の繊細な相互作用についての考察に誘う。ダッジはユーモアや遊び心、思慮深い探究心を織り交ぜながら、鑑賞者にこれらのテーマに向き合うことを促し、私たちと言語、そして言語が描写しようとする現実との間にある、複雑で絶え間なく変化する関係を映し出す鏡を差し出しているのだ。

アレックス・ダッジ

アレックス・ダッジ | Alex Dodge
1977 年アメリカ合衆国コロラド州デンバー生まれ、現在ブルックリン(ニューヨーク)と東京を拠点に活動している。
近年の主な展示として、個展「Daemon-Haunted World」(2023年/ Klaus von Nichtssagend Gallery)、個展「Personal Day」(2023年 / BB&M)、個展「Laundry Day : It all comes out in the Wash」(2021年/ Maki Fine Arts)、「Programmed: Rules,Codes, and Choreographies in Art, 1965-2018」(2018-19 年 / ホイットニー美術館)など。ニューヨーク近代美術館、ホイットニー美術館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館などに作品が収蔵されている。



パート1 :
アレックス・ダッジ A Way With Words
2024年4月6日(土) – 5月12日(日)
Maki Fine Arts
東京都新宿区天神町77-5 ラスティックビルB101
水曜 – 土曜 12:00 – 19:00 / 日曜 12:00 – 17:00
定休日 月曜・火曜

パート2 :
アレックス・ダッジ A Way With Words
2024年4月26日(金) – 5月15日(水)
銀座蔦屋書店 GINZA ATRIUM
東京都中央区銀座6丁目10-1 GINZA SIX 6F
営業時間 11:00 – 20:00

Group Show
グレン・ボールドリッジ | ホーリー・クーリス | アレックス・ダッジ | 城田圭介

グレン・ボールドリッジ|Glen Baldridge
 No Way
2021年
Gouache on paper
60.96 x 46.04 cm
ホーリー・クーリス | Holly Coulis
Lemon on End
2022年
Gouache on Arches paper
45.72 x 60.96 cm
アレックス・ダッジ | Alex Dodge
Tanks – January 24, 2023 (Midnight Embassy)
2023年
oil and acrylic on canvas
42.2 x 56.2 cm
城田圭介 | Keisuke Shirota
Coastal path 
2022 – 2023年
photograph and oil on canvas board mounted on wood frame
60 x 90cm

Maki Fine Artsでは5月13日(土)より6月25日(日)まで、4名の作家によるグループショーを開催いたします。新作、および近作を展示いたします。是非ご覧ください。

グレン・ボールドリッジ|Glen Baldridge
1977年アメリカ合衆国テネシー州ナッシュビル生まれ。近年の主な展示に、個展「Wigwag」(2023年/ Klaus von Nichtssagend Gallery)、個展「What Now Who How」(2022年/ Halsey McKay Gallery)、個展「No Way」(2019年 / Halsey McKay Gallery)など。メトロポリタン美術館、ニューヨーク近代美術館、ホイットニー美術館、RISD美術館などに作品が収蔵されている。

ホーリー・クーリス| Holly Coulis
1968年カナダ、トロント生まれ。近年の主な展示に、個展「Sun Shift」(2023年/ Cooper Cole Gallery)、個展「Eyes and Yous」(2022年/ Klaus von Nichtssagend Gallery)、個展「Orbit」(2021年/ Philip Martin Gallery)など。ブラントン美術館、Nerman美術館などに作品が収蔵されている。

アレックス・ダッジ|Alex Dodge
1977 年アメリカ合衆国コロラド州デンバー生まれ。近年の主な展示に、個展「Personal Day」(2023年 / BB&M)、個展「Laundry Day : It all comes out in the Wash」(2021年/ Maki Fine Arts)、個展(2020年 / Klaus von Nichtssagend Gallery)、「Programmed: Rules,Codes, and Choreographies in Art, 1965-2018」(2018-19 年 / ホイットニー美術館)など。メトロポリタン美術館、ニューヨーク近代美術館、ホイットニー美術館、ボストン美術館、RISD美術館などに作品が収蔵されている。

城田圭介|Keisuke Shirota
1975 年神奈川県生まれ。近年の主な展覧会に、二人展「Beyond the Frame 城田圭介×那須佐和子」 (2023年/ haco -art brewing gallery- )、個展「Out of the frame」(2022年 / Maki Fine Arts)、個展「Over」(2021年 / Maki Fine Arts)、「写真はもとより PAINT, SEEING PHOTOS」(2019年-2020年 / 茅ヶ崎市美術館)など。茅ヶ崎市美術館に作品が収蔵されている。

Artist

アレックス・ダッジ – Daemon-Haunted World

2023年9月8日 – 10月21日
Klaus von Nichtssagend Gallery

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アレックス・ダッジ 「LAUNDRY DAY : IT ALL COMES OUT IN THE WASH」

アレックス・ダッジ
Laundry Day: Rag No. 59,109 (Neon Carrot)
2021年
oil and acrylic on canvas
31.8 x 41 cm
アレックス・ダッジ
Laundry Day: Rag No. 58,931 / 59,084 (Spring Bud)
2021年
oil and acrylic on canvas
45.5 x 53 cm
アレックス・ダッジ
Laundry Day: It All Comes Out In the Wash
2021年
oil and acrylic on canvas
194 x 162 cm


Maki Fine Artsでは9月25日(土)より11月7日(日)まで、アレックス・ダッジ 個展「LAUNDRY DAY : IT ALL COMES OUT IN THE WASH」を開催いたします。日本では約 2 年半ぶり、2 回目の個展となります。本展では、これまでの作品で題材にしてきたニューヨークタイムズ紙などの新聞や印刷物のイメージと、テキスタイルやパターン、衣服や布のイメージが組み合わされた新作ペインティングを発表いたします。是非ご高覧下さい。


二次元と三次元のあいだ
出原 均(兵庫県立美術館 学芸員)

前回のマキファインアーツでの個展「情報のトラウマ」の出品作は、ぐしゃっとつぶされたり、梱包に使われたりした新聞紙や布地が主モチーフだった。いかにも視覚的イリュージョンを刺激する形である。その歪みと基本の形との差から私たちの脳が三次元性をはじき出すわけだ。キャンバスの上に背景なしで、それだけが描かれたモチーフは、しかも、いくらか厚みを感じさせる。油彩絵具は塗り重ねられたり、厚く塗られたりしているので(その上に文字や模様がステンシルで転写される)、新聞や布の三次元イリュージョンが多少肉付けされたように見える。しかし、よく視るなら、絵具の盛り上げの中には、新聞の見かけの凹凸などには沿わないものや、その土台であるキャンバスの平面性を喚起させるものがあり、けっしてイリュージョンの増幅に還元されるわけでなく、一様ではない。それゆえ、三次元(厚み)と二次元(三次元イリュージョン)、両方の知覚の間で私たちの眼差しはさまようことになる。二つの知覚の差異という視覚芸術の普遍的な問題が、この小世界で展開されているのだ。緻密な計算と柔軟な付置によって編み上げられた絵画というべきだろう。
アレックス・ダッジは、コンピュータ上で三次元シミュレーションしたイメージを用いる。また、レーザーカットしたステンシルは、日本の型染めなどがヒントになったという。最先端テクノロジーと伝統の技、西と東、アートとデザイン、絵画と版画。これらは対照的、対比的な二項と見なされる(あるいは、戦略的に提示することもできる)が、この作家の手にかかると、上述したように、意図に合わせて、実にしなやかに制作の中に組み込まれる。型染めなど、説明を受けるまで全く意識しないほど彼の手法である。こうして、高い技術(テクノロジー)に裏打ちされ、知的に計算された先で、あの、見ることの驚きが生み出されるのである。
彼が近年描いているモチーフは日常の消費物のようだ。目の前を過ぎていくささやかな存在に、今日性と意味を見出しているのだろうが、そこに詩に通じるものも感じられる。詩人は現実とは独立した文字の世界を構築する。ダッジも、それと同様のことを絵筆で行っているのだ。


アレックス・ダッジ | Alex Dodge
1977 年アメリカ合衆国コロラド州デンバー生まれ、現在ブルックリン(ニューヨーク)と東京を拠点に活動している。近年の主な展示に、個展(2020年 / Klaus von Nichtssagend)、個展「情報のトラウマ」(2019 年 / Maki Fine Arts)、「Programmed: Rules,Codes, and Choreographies in Art, 1965-2018」(2018-19 年 / ホイットニー美術館)、個展「Whisper in My Ear and Tell Me Softly」(2018 年 / Klaus von Nichtssagend Gallery)など。ニューヨーク近代美術館、ホイットニー美術館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館などに作品が収蔵されている。



Artfairs

CADAN : 現代美術 2023

2023年7月8日 – 10日
WHAT CAFE & T-LOTUS M
展示アーティスト : アレックス・ダッジ

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Ordinary objects – アレックス・ダッジ / 益永梢子 / 荻野僚介 / 末永史尚

アレックス・ダッジ
Soft Power for Hard Problems (Nike) I
2020年
oil on canvas
38 x 45.5 cm

Maki Fine Artsは、アレックス・ダッジ、益永梢子、荻野僚介、末永史尚によるグループショー「Ordinary objects」を11月27日(金)より12月20日(日)まで、開催いたします。

身近にありふれたものを作品の題材として、それぞれ異なるアプローチで絵画を考察する4名のアーティストを取り上げています。是非ご高覧下さい。


アレックス・ダッジ | Alex Dodge
1977 年アメリカ合衆国コロラド州デンバー生まれ、現在ブルックリン(ニューヨーク)と東京を拠点に活動している。近年の主な展示に、個展(2020年 / Klaus von Nichtssagend)、個展「情報のトラウマ」(2019 年 / Maki Fine Arts)、「Programmed: Rules,Codes, and Choreographies in Art, 1965-2018」(2018-19 年 / ホイットニー美術館)、個展「Whisper in My Ear and Tell Me Softly」(2018 年 / Klaus von Nichtssagend Gallery)など。ニューヨーク近代美術館、ホイットニー美術館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館などに作品が収蔵されている。


益永梢子 | Shoko Masunaga
1980年 大阪生まれ。2000年 成安造形短期大学造形芸術科洋画クラス卒業。絵画を起点とし、多様な手法を用い制作を行っている。周囲の環境・空間との関係性を重視する作品群は可変的で置換可能な性質を持つ。近年の主な活動:文化庁新進芸術家海外研修制度によりNARS Foundation主催のInternational Residency Programに参加 (2018-2019年 / Brooklyn New York) 、「Box, Box, Box」(2019年 / Cooler Gallery, Brooklyn New York)、「クリテリオム93益永梢子展 : Daily Routine」(2018年 / 水戸芸術館現代美術ギャラリー第9室)、「VOCA展」(2017年上野の森美術館)、「ルランタット パダンパダン」(2016年 / gallery yolcha)、「platform」(2016年 / LOOP HOLE)、「Sabbatical Company#1 夕方帰宅してみると」(2016年 / milkyeast)、「ポストにこれが届いていた」(2015年 / ETNA&IONIO)、「Abstract Butter at HAGISO」(2015年 / HAGISO)、「三つの机のあるところ」(2015年 / Art Center Ongoing)、「メディウムの条件 ART CRITIQUE n.04刊行記念企画」(2014年 / HAGISO)など。


荻野僚介 | Ryosuke Ogino
1970年埼玉県生まれ。1993年明治大学政治経済学部卒業、1998年Bゼミスクーリングシステム修了。 色彩と形態の関係性を考察しながら、主に色面を用いた絵画作品の制作を行っている。近年の主な展覧会として、「引込線 / 放射線」(2019年 / 第19北斗ビル)、「MOT コレクション ただいま / はじめまして」(2019年 / 東京都現代美術館)、「絵画の現在地」(2018年 / 札幌大通地下ギャラリー500m美術館)、個展「(-ness)」 (2018年 / Maki Fine Arts)、個展「ハロー」(2016年 / Gallery&cafe see-saw)、個展「個点々」(2015 年 / switch point)、「ペインティングの現在 -4 人の平面作品から-」(2015年 / 川越市立美術館)、個展「cannot see clearly」 (2014年 / gallery COEXIST TOKYO)、「New Vision Saitama 4 静観するイメージ」(2011年 / 埼玉県立近代美術館)など。


末永史尚 | Fuminao Suenaga
1974 年山口生まれ。1999 年東京造形大学造形学部美術学科美術 I 類卒業。日常見ているものや展示空間に関わるものからピックアップした視覚的トピックをもとに絵画・立体作品を制作している。近年の主な展覧会として、個展「ピクチャーフレーム」(2020年/Maki Fine Arts)、「アートセンターをひらく (第 I 期 第II期)」(2019 -2020年/ 水戸芸術館 現代美術ギャラリー)、「百年の編み手たち – 流動する日本の近現代美術 – 」(2019 年/東京都現代美術館)、「MOTコレクション ただいま / はじめまして」(2019年/東京都現代美術館)、個展「サーチリザルト」(2018 年/ Maki Fine Arts)、「引込線 2017」(2017年/ 旧所沢市立第2学校給食センター)、「APMoA Project, ARCH vol. 11 末永史尚「ミュージアムピース」(2014 年 / 愛知県美術館展示室 6)、「開館 40 周年記念 1974 第 1部 1974 年に生まれて」(2014 年 / 群馬県立近代美術館)など。

Winter Show – アレックス・ダッジ / 加納俊輔 / 高石晃 / 麻生晋佑

アレックス・ダッジ
“The Only Stars Are In Your Eyes”
2019年
7 color screen print with braille texture on Bristol
101.6 x 76.2cm
Edition of 40

Maki Fine Artsでは1月25日(土)より、アレックス・ダッジ、加納俊輔、高石晃、麻生晋佑によるグループショー「Winter Show」を開催致します。ギャラリーアーティスト4名の作家による新作、近作を発表いたします。是非ご高覧下さい。

アレックス・ダッジ / Alex Dodge
1977 年アメリカ合衆国コロラド州デンバー生まれ、現在ブルックリン(ニューヨーク)在住。近年の主な展示に、個展「情報のトラウマ」(2019 年 / Maki Fine Arts)、「Programmed: Rules,Codes, and Choreographies in Art, 1965-2018」(2018-19 年 / ホイットニー美術館)、個展「Whisper in My Ear and Tell Me Softly」(2018 年 / Klaus von Nichtssagend Gallery)など。ニューヨーク近代美術館、ホイットニー美術館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館などに作品が収蔵されている。

加納俊輔 / Shunsuke Kano
1983 年大阪生まれ。京都在住。2010 年 京都嵯峨芸術大学大学院芸術研究科修了。写真を通して、複雑な階層を意識させる手法により、「見る」という行為を問い直す作品を発表している。近年の主な展覧会として、個展「ピンク・シャドウ」(2018 年 / Maki Fine Arts)、個展「コンストラクション断面」(2016 年 /Maki Fine Arts)、個展「第 8 回 shiseido art egg『加納俊輔 | ジェンガと噴水』」(2014 年/ 資生堂ギャラリー)、「VOCA 展 2017 現代美術の展望─新しい平面の作家たち」(2017 年/上野の森美術館)、「これからの写真」(2014 年 /愛知県美術館)など。

高石晃 / Akira Takaishi
1985 年神奈川県生まれ。2010 年武蔵野美術大学大学院美術専攻油絵コース修了。遠近法の操作や、支持体の切断、表層の掘削などの手法でイメージと物質の境界を横断する作品を制作している。近年の主な展示として、個展「下降庭園」(2019 年 / clinic)、「三つの体、約百八十兆の細胞」(2017 年 /Maki Fine Arts)、個展「地下水脈」(2016 年 / Maki Fine Arts)、「わたしの穴、美術の穴」(2015 年 / スペース 23°C)、個展「シャンポリオンのような人」(2013 年 / 児玉画廊)など。

麻生晋佑 / Shinsuke Aso
1979 年群馬県生まれ。2000 年北関東造形美術専門学校卒業後、渡米。2004 年 School ofVisual Arts(NY)卒業。現在ニューヨークを拠点に、日常生活の中で収集した素材を使ったコラージュの制作や、段ボールやパッケージをはがきサイズに切ったポストカードを 1枚 25 セントで販売する SAPC プロジェクトなどを続けている。これらの活動を通して鑑賞者に独自の解釈や判断を促す表現方法を模索し、鑑賞者の主体性と作品解釈の多様性を認めている。近年の主な展覧会として、「メルド彫刻の先の先(白川昌生キュレーション)」(2018 年/Maki Fine Arts)など。

アレックス・ダッジ「情報のトラウマ」

アレックス・ダッジ
The Trauma of Information (December 12, 2018)
2019年
oil on linen
56.5 x 76cm

Maki Fine Artsでは、3月23日(土)より、ニューヨークを拠点とするアーティスト、アレックス・ダッジの日本初となる個展「情報のトラウマ」を開催します。ニューヨークタイムズ誌をモチーフとした新作ペインティングを中心に発表します。

アレックス・ダッジは、先進的なデジタルツールとクラシカルな技法を融合させ、作品を制作しています。3Dモデリングを駆使し、設計された立体的イメージを基に、レーザーカットステンシルを用いたり、木版印刷などのテクニックを応用して、厚塗りの絵具の層による豊かなテクスチャーの画面を作り出します。ダッジが開発したユニークな制作スタイルは、伝統的な技法への強い関心と考察によるもので、例えば、日本の染色技術である「型染め」からヒントを得たといいます。ダッジの作品を通して、巧みに操作されたデジタルデータが伝統的なテクニックに変換され、既存のフォーマットを超えた新次元のペインティングへと進化していくプロセスを見出すことができるでしょう。

本展で展示する作品「情報のトラウマ」は、ダッジが東京に滞在した際の体験から生まれました。当時行われた2016年のアメリカ大統領選挙を、東京にいながら、ニュースメディアを通して情報が伝わる中で、大きなショックを受けたと語ります。「情報のトラウマ」は、現代のメディア全体の不確実性を暗示しているようでもあり、膨大な情報が日々消費され、更新される時代におけるメディア・リテラシーの考察という題材が取り入れられています。

アレックス・ダッジの日本初個展、是非ご高覧下さい。

アレックス・ダッジ / Alex Dodge
1977年アメリカ合衆国コロラド州デンバー生まれ、現在ブルックリン(ニューヨーク)在住。近年の主な展示に、グループ展「Programmed: Rules, Codes, and Choreographies in Art, 1965-2018」(ホイットニー美術館、ニューヨーク)、個展「Whisper in My Ear and Tell Me Softly」(Klaus von Nichtssagend、ニューヨーク)など。ニューヨーク近代美術館、ホイットニー美術館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館などに作品が収蔵されている。

情報のトラウマ
アレックス・ダッジ

今回の作品の原点は、ある意味では日本にある。文化庁と日米友好基金の支援を得て、特別研究員として四カ月間日本に住んでいたことがある。小さなスタジオスペースを設けて作品制作をしているタイミングで2016年のアメリカ大統領選挙が行われた。同じく日本に滞在中のアメリカ人が、選挙の展開を目にして「まるで国際宇宙ステーションから核戦争が始まるのを見ているようだ」と言っているのを耳にした。自己破壊した地球が完全に抹消される様子を、危険
が届かない遠隔の地から眺めているようで、どうすることもできない完全な無力感を感じた。日本にはよき友が沢山いたが、母国に戻った時のことを考えると増してくる不安や悲しみについて腹を分って話せる仲間は少なかった。私にできることは、新しい政権の現実を把握しようとするニュースメディアが超高速に吐き出すニュースを、ただただ見たり読んだりすることだけだった。

ニューヨークに帰国後、慣れ親しんだブルックリンは灰色を帯び、重く、敗北感が漂っていた。憂鬱な雲に覆われた新しい現実の中、痛みを伴うと分かっていながらニュースを止めることはできず、まるで中毒者のようにニュースに夢中になった。急激かつとめどなく流れてくるニュースは、つい先ほど報道された大見出しよりもさらに切羽詰まったセンセーショナルな見出しで私たちの注意をひき、無力感は更に強化する。現在のメディアのペース、そしてことによるとその品質も、私たちが世界を体験する際の時間の遅れを引き起こしているのではいかと私は思う。日々消費される膨大な情報は、熟考した上での長期的な視野をもつ能力に影響を及ぼしている。私たちの記憶はもはや昔の面影はない。インターネットをアーカイブのように使えば、過去の出来事を引き出したり参考にしたりして現在と過去を見比べることができる。しかし、インターネットは動的な生命体のように有為転変しており、パーソナライズされたウェブ検索やソーシャルメディアの利用によって、私たちの近年の歴史の視野を遮ったり歪めることが多い。

今回の作品は、ニュースを凝固できる形でつかもうとしたもので、人工的素材を使って時間を静止することを目的としている。そんなつかの間の一瞬を、実際の新聞紙の複製という形態で捉えている。衰退の真っただ中にある新聞だが、完全には無くならないことへの願いも込めている。旧式のかたちではあるものの、私は紙の感触と活字のメディアがたまらなく好きだ。作品の新聞紙は、重ね塗りされた油性塗料で厚みを帯び、主に読み終わった後の状態で描写されている。放り投げられたり捨てられたり、頭の中に入った内容の記憶と共に、新聞紙はゴミやリサイクルに出される。骨の折れる複製作業を介して絵画は別の素材に変換され、はかなく一時的なものが、見落とすことができない固体化した人工物になった。木版印刷と手書き油絵具を使って、一つ一つ独特に作りあげられている。ところどころに見える活字の内容は不完全な文章であり、写真の多くはありふれた日常的な様子を映しているが、全体を観ると、まるで鏡のように私たちが現在住んでいるこの独特な時代を映し出してくれる。それはある時はグローバルな光景であり、ある時は深く個人的な光景である。

「情報のトラウマ」シリーズは、苦しみの最中にありながら私たちに苦痛をもたらす新聞メディアに敬意を表して制作された。情報のトラウマから生き残るには、見通せる力をもつしかない。ユーモアと皮肉から学ぶその能力は、痛みや悲しみを耐えられるものにしてくれるが、決して忘れさせてはくれない。

Artfairs

Taipei Dangdai

2022年5月20日 – 22日
Taipei World Trade Center
ブースナンバー : S09
展示アーティスト:アレックス・ダッジ

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