2018年1月19日 - 2月18日
オープニング・レセプション:1月19日(金)18:00 - 20:00
Maki Fine Artsでは、2018年1月19日(金)より、末永史尚 個展「サーチリザルト」を開催致します。
末永史尚は1974年山口県生まれ、東京造形大学(絵画専攻)卒業。近年の主な展覧会として、「引込線2017」(旧所沢市立第2学校給食センター/2017年)、「αMプロジェクト トランス/リアル - 非実体的美術の可能性 vol.3 Transform/Paint 末永史尚・八重樫ゆい」 gallery αM(2016年)、「開館40周年記念 1974 第1部 1974年に生まれて」(群馬県立近代美術館/2014年)、「APMoA Project, ARCH vol. 11 末永史尚「ミュージアムピース」(愛知県美術館/2014年)など。
本展ではインターネット上での画像検索ページにて、画家の名前を検索した結果、画面でその画家の作品画像が並んでいる状態を描いた「Search Results」の新作を発表します。2010年から制作をスタートした同シリーズは、これまで美術史における巨匠たち(マーク・ロスコ、エルズワース・ケリー、バーネット・ニューマンなど)を主なモチーフとして選んできました。新たなモチーフで展開する最新の「Search Results」を是非ご高覧ください。
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ぎこちない余白に ── 末永史尚の《サーチリザルト》
林 卓行(はやし たかゆき|美術批評/東京藝術大学准教授)
末永の絵画はいつもおだやかな外観の底流に、かすかに既存の諸制度への参照、あるいは批評を伴っている。《サーチリザルト》もひとまずその作品だけを見るなら、17世紀のヨーロッパに流行したギャラリー・ペインティング(壁面を絵画で埋めつくされた蒐集室を細密に描いたもの)のパロディと解釈することができるだろう。
しかしそのタイトルが直截に示すのはなにより、インターネット・ブラウザでちいさな検索窓にあるキーワードを打ち込むと、おびただしい数の画像が続くウィンドウ上に吐き出され、検索者の一覧に供されるあのしくみのことだ。末永は画家の名前などをキーワードにして検索された結果(=search result)をモティーフに、それをほぼそのまま絵画化している。ならべられる作品の種類や順序も検索エンジンのアルゴリズムから導き出されたままで、画家はそこにいっさい手を加えることがない。ただかれはその眼にかなう選択と配置になるまで、キーワードとウィンドウの大きさを試行錯誤するだけなのだという。
この「検索」が社会=政治的な論点を孕むのは言うまでもない。こんにちその結果のなかの順位は経済的利得の多寡に直結する。だから検索のアルゴリズムは極限まで中立的でなければならないし、開発元の企業はこれを厳重に秘匿する。それをいまや外部から懸命に推測して、特定の情報の検索結果内での順位を上昇させようとする事業(=search engine optimization)さえあるのは、権力者の意向をどれだけただしく先読みできるかみずから競い合う臣民たちの位階性と、それによってかえって強化されてしまう権力のありようを思わせもする。
末永はただ「絵になる」というアルゴリズムを手に、この情報=画像の位階を飛び越える。あらためてその作品を見れば、モニターに映る検索結果とはおおきく異なって、全体のトーンとヴァルールはみごとに全体が均一になるように整えられている。そして案の定、かれはその作品を描くとき、画中のちいさな絵をひとつひとつ仕上げてゆくわけではなく、作品全体を同時にすこしずつ描き進めてゆくのだという。
このとき、検索結果にはつきものの画像間のぎこちない余白もまたひとつの形態、そして色彩として活用される。《サーチリザルト》にあって、検索結果の画像としてのリアリティと絵画としてのフォーマルな達成を同時に可能にしているのは、とりわけこの余白である。個々の作品はそれぞれこの白を得ていっそう、検索エンジンが期せずしてそなえてしまった権力に対する批評のさきに、いつものおだやかな末永のパレットを灯すのだ。
末永史尚 / Fuminao Suneaga
"Search Results"
2017
パネル、綿布にアクリル / Acrylic, cotton, panel
26.5×40.5cm
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