石井友人「未来の家」

2017年5月13日 - 6月11日

オープニング・レセプション:5月13日(土)18:00 - 20:00

Maki Fine Artsでは、2017年5月13日(土)より、石井友人個展「未来の家」を開催します。

石井友人は1981年東京生まれ。2006年武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース修了。これまでの 主な展覧会として、グループ展「グレーター台北ビエンナーレ」(2017年/NTUA)「引込線」(2015年/旧所沢市立第 2学校給食センター)、個展「『複合回路』認識の境界」(2011年/Gallery αM)など。

Maki Fine Artsでの初個展となる本展は「未来の家」と題され、石井自身が生まれ育った郊外のニュータウンをテーマと した新作を発表します。情報の受容装置として自身の絵画を位置づけ、現代における情報とどのように対峙するのか模索してきた石井にとって、かつての高度経済成長の都市開発で大量に生み出された均一化した空間イメージは、興味を惹きつけられる対象です。1970年代に制作された、鴫剛の団地を描いた作品「Housing」、島州一による作品「シーツ とふとん」など、既存の作品イメージを引用し、新たに変換していく手法は、情報環境に対する懐疑の眼差しの中に、 過去・現在・未来へつながる時間的厚みを意識させます。今回の新作について、「印刷ミスや再生不良、視覚的不自由さといった記録媒体の不具合から、情報を構成する媒体の特性そのものが露呈し、そこに身体とデジタルデバイスの互換性を感じ取りながら制作を試みた」と石井は語ります。本展では映像作品を含めた、約10点を展示します。是非ご高覧ください。

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「故郷としての郊外」
勝俣涼(美術批評)

 石井友人は以前、自身が生まれ育った郊外の空き地に穴を掘ったことがある。しかし過去の地層へと遡行するかに見えるその行為は果たして、ニュータウン開発によって失われた故郷を想像的に回復する、というノスタルジー的な目論見だったのかといえば、そうではないと私には思える。というのも、石井にとってはほかならぬ郊外こそが故郷であるからだ。郊外の典型的な描写として、「どこにでもある風景」というのがある。その無個性性は一面において事実だとしても、しかし風景や場所の記憶は、風景や場所それ自体に書き込まれるのではない。あくまで人のうちに宿るのだ。そこで生まれ育った者にとって郊外は、「どこにでもある風景」でありながら、特別な風景でもある。
 この二重性を抱えた「郊外」の感覚こそが、石井の制作をノスタルジー的な感傷の意味充足から解放しているのではないか。郊外の拡大現象は、各々独自の文化圏として存在する多種多様な外部空間を均質かつ画一的な内部へと包摂するユートピア的運動であり、異質な土地に同化を強いる植民地主義的な介入ともいえる。石井が鉢植えの植物をたびたび描くのには、そうした背景がある。その環境固有の閉じた生態系を構成する自然のままの植物ではなく、人為的に作られた、「どこにでも移植できる」入れ替え可能な個体。それがまるで自画像のように描かれる。乱視的にズレつつ重なる輪郭は、その「作られた」構築物としての虚構性を、同期を失調させた線や面や色のデジタルな継ぎ接ぎも露わに教えている。むしろその虚ろさにこそ、リアリティがあるとでも言うように。

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石井友人 「未来の家」/ Tomohito Ishii "House of Future"
2017, Oil on canvas, 194×97cm

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石井友人「生きられた時間」/ Tomohito Ishii
2017,Oil on canvas, 80.3×60.5cm

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石井友人「未来の学校」/ Tomohito Ishii "School of Future"
2004-17, HD, 50min

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