Exhibition

Maki Fine Arts 10周年記念展 末永史尚「ピクチャーフレーム」

2020年8月29日 - 9月27日

末永史尚
ピクチャーフレーム
2020年
アクリル、顔料、金泥・綿布、木製パネル
51.3 x 41.8 x 5.5cm

Maki Fine Arts 10周年記念の展覧会として、末永史尚「ピクチャーフレーム」を8月29日(土)より開催致します。実在する名画の額縁を描いた作品シリーズ「ピクチャーフレーム」の新作を発表いたします。同シリーズは、2014年の愛知県美術館での展覧会「ミュージアムピース」で初めて発表され、展覧会場となった美術館の所蔵品のフレームに焦点を当てたものでした。
本展での新作は、末永自身がこれまで実際に鑑賞したもの、もしくは、インターネットでリサーチした名画を題材としています。Maki Fine Artsでは約2年半ぶり、4回目の個展となります。是非ご高覧下さい。

親密さを設える – 末永史尚「ピクチャーフレーム」
能勢陽子(豊田市美術館学芸員)

菓子箱のような装飾的なかわいらしさと、ミニマルなレリーフによるコンセプチュアリズムが、矛盾なく合体している。つるつるとした平坦な表面は、意味あり気な深読みを滑り抜けていく。そこに並んでいるのは、ニューヨーク近代美術館やメトロポリタン美術館、国立西洋美術館、愛知県美術館などの絵画コレクションを描いたものである。
絵画を描いたといっても、縁取るフレームのみがはっきりとした輪郭線で描かれ、当の絵画は単色にすり替わりどこかにいってしまった。といってなにもないわけではなく、「空」の部分が箱のような全体を均一に満たして、まるで別ものになっている。オリジナルのフレームは、葉や幾何学形状の浮彫や寄木細工が施されたもの、またシンプルな直線のみのものであったようだ。色調や諧調が一切ない画面は、作品がもともと持っていたはずの時代性や主義イズム、それらが描かれることになった歴史的背景などの個別性を、すべて取り払っている。実用的な機能か、せいぜい絵画を引き立てる脇役であった額縁は、単色の絵画と同じ、いやむしろ際立っている。
そもそも額縁は、絵画が建築と一体化していた壁画の状態から、自立して持ち運びできるようになったときに生まれた。そこに並ぶフレームは、威容を誇る大きさではなく、どこにでも持ち運べそうな小ぶりのものばかりである。「ピクチャーフレーム」は、家具にも似て、場に親密さと自由を設える。そして引用ならではのフェイク感も手伝って、絵画の価値を殊更吹聴しない。しかしさらに軽やかに問う。「絵画とはなに?」

末永史尚 | Fuminao Suenaga
1974 年山口生まれ。1999 年東京造形大学造形学部美術学科美術 I 類卒業。日常見ているものや展示空間に関わるものからピックアップした視覚的トピックをもとに絵画・立体作品を制作している。近年の主な展覧会として、「アートセンターをひらく (第 I 期 第II期)」(2019 -2020年/ 水戸芸術館 現代美術ギャラリー)、「百年の編み手たち – 流動する日本の近現代美術 – 」(2019 年/東京都現代美術館)、「MOTコレクション ただいま / はじめまして」(2019年/東京都現代美術館)、個展「サーチリザルト」(2018 年/ Maki Fine Arts)、「引込線 2017」(2017年/ 旧所沢市立第2学校給食センター)、「αMプロジェクト トランス/リアル – 非実体的美術の可能性 vol.3 Transform/Paint 末永史尚・八重樫ゆい」(2016年 / gallery αM)、
「Maki Fine Arts 5周年記念展 控えめな抽象(末永史尚キュレーション)」(2015年/ Maki Fine Arts)、「APMoA Project, ARCH vol. 11 末永史尚「ミュージアムピース」(2014 年 / 愛知県美術館展示室 6)、「開館 40 周年記念 1974 第 1部 1974 年に生まれて」(2014 年 / 群馬県立近代美術館)など。