Exhibition

城田圭介「波と海」

2024年5月25日(土)- 6月23日(日)

Maki Fine Artsでは、5月25日(土)より6月23日(日)まで、城田圭介の新作による個展「波と海」を開催いたします。城田の作品は、写真の周囲に拡張するイメージを描き加えることにより、視覚の外側にあるもの(記憶の不確実さ)を可視化し、「見ること」についての意味を意識させます。写真の周囲のイメージは、写真に写っている情報を頼りに油彩で描き出されていますが、画面上の所々に見られるイメージのズレや余白が、断片的に途切れたような記憶の曖昧さを感じさせられます。あえてそのような痕跡を残しながら、複数の写真からイメージを繋ぎ合わせ、全体へと集約させるように描かれ帰結されます。
Maki Fine Artsでの3回目の個展となる本展では、海辺の風景を描いた新作を発表いたします。美術作品の普遍的なモチーフである海は、城田にとっても身近で日常的なものであり、必然的に選ばれた題材です。是非ご高覧ください。



波と海

海のある街に移住して八年が過ぎる。とりたてて海のレジャーに興じているわけではないが、海辺を歩き、眺め、子供達と過ごし、海の景色は日常の一場面になった。もちろんいいことばかりではない。海に包囲された地震大国のこの国で、海の近くに住むリスクもそれなりに理解している。海の恩恵もリスクも感じながら、一方、海を題材にした数多の絵画や写真、アートが海を見るたびに脳裏をよぎる。新しくもないありふれたテーマであることは承知しているが、自分も海を題材にした制作を行うことは避けられないように思えた。
制作はいつもランダムに撮りためた凡庸な写真を見返すところからはじまるが、ひとつの題材に絞って撮影するのは今回が初めてだ。展示作品に使った写真は二千枚を超える中から選んだが、選ばれなかった写真はもとより「撮られなかった写真」の数はその比ではない。それに付随する「描かれなかった絵画」も同様に。波のように終わりなく現れては消え去る選外の存在なしには、ここにある作品はなかったはずだ。

城田圭介

城田圭介 | Keisuke Shirota
1975 年神奈川県生まれ。2003年東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻修了。近年の主な展覧会として、「親子で感じる横須賀 子育てから生まれた作品」(2023年/ヨコスカアートセンター)、「Beyond the Frame 城田圭介×那須佐和子」(2023年/ haco -art brewing gallery- /うららか絵画祭)、「かくれんぼ—さがして。そして、」(2022年/茅ヶ崎市美術館)、個展「Out of the frame」(2022年/Maki Fine Arts)、個展「Over」(2021年/Maki Fine Arts)、個展「写真はもとより PAINT, SEEING PHOTOS」(2019年-2020年/茅ヶ崎市美術館)など。