Exhibition
伊藤誠|遠くの場所
2025年9月13日(土)- 10月12日(日)
オープニングレセプション: 9月13日(土)17:00 – 19:00

遠くの場所−04
2025年
亜鉛鉄板、亜鉛塗料
54.8 x 33.6 x 28 cm

遠くの場所−05
2025年
亜鉛鉄板、亜鉛塗料
58.2 x 25.3 x 16.7 cm

正方形の体積 Ⅱ
2025年
亜鉛鉄板
20 x 30.3 x 20 cm
伊藤誠の彫刻を見ることは、それ自体が探索的な行為である。それは夢のなかでみたかたちを、記憶を手繰り寄せるようにたどり、想い出すことに近いかもしれない。
その彫刻では、その表面に平面的な立体図や展開図のような描線が施されるものがある。立体図や展開図は、それ自体が視覚的には立体的である。が、フラットな平面の上に空間的なイリュージョンが展開される絵画とは異なり、伊藤の描線は、彫刻であるのだから当然、三次元の立体の上で展開される。そこで描線は、三次元の立体に貫入・侵食したかと思うと両者は論理的に反発しあう。そこでは複数の位相が交換され、その配置もつねに入れ替わっていく。彫刻のかたちは、かたちがかたちを裏切る錯綜的な視覚経験のただなかで経験されるのだ。
だからどれほど近くにあっても、その彫刻をうまく見ることができない。そこでは、近くと遠く、二次元と三次元が交錯し、今見ていることが過去の時間によって侵食される(それはすべて夢に似ている)。かたちはつねに作り変えられる。この行為のなかからはじめてかたちが現れる。とすれば、かたちとは、交換、侵食、転送、反転、ズレ、配置換えなどの複数の位相の交錯のなかではじめて立ち現れるものであるということだ。ゆえに、平面と立体、ドローイングと彫刻などの区分もまた無効化される。彫刻をつくることは、そのようなどこにもない場所を観者の眼前に差し出すことである。
沢山遼(美術批評家)
—
伊藤誠 | Makoto ITO
1955年愛知県生まれ。1983年武蔵野美術大学大学院 造形研究科彫刻コース修了。近年の主な展示として、「瀬戸内国際芸術祭」(2025年/香川)、「パターンと距離」(2024年/Maki Fine Arts)、個展(2024年/ガレリア フィナルテ)、「第Ⅰ期 コレクターズ・アイ1 90年代を中心に」(2024年/豊橋市美術館)、「Group Show – 豊嶋康子 | 荻野僚介 | 伊藤誠」(2023-24年/Maki Fine Arts)、「DOMANI・明日展 2022–23」(2022-23年/国立新美術館)、「heliotrope(ヘリオトロープ)」(2022年/照恩寺)、「オムニスカルプチャーズ—彫刻となる場所」(2021年/武蔵野美術大学美術館)など。
武蔵野美術大学教授(1999年より)。
愛知県美術館、宇都宮美術館、千葉市美術館、東京国立近代美術館などに作品が収蔵されている。
伊藤誠――夢を見るための機械
2025年9月8日(月)- 10月26日(日)
武蔵野美術大学 美術館 展示室2・4・5 / アトリウム1
link