Exhibition
平野真美「変身物語 METAMORPHOSES」
2024年11月30日(土)- 2025年1月12日(日)
年末年始休業 : 12月30日 – 2025年1月7日
Maki Fine Arts では、11 月 30 日(土)より 2025 年 1 月 12 日(日)まで、平野真美 個展「変身物語 METAMORPHOSES」を開催いたします。Maki Fine Arts では 2 回目の個展になります。
架空の生物であるユニコーンを実在化し、骨格・内臓・筋肉・皮膚などを精巧に作り込んだ「蘇生するユニコーン」(2014 年~)は現在進行形で継続する、平野の代表的なプロジェクトでありますが、それと同等に「変身物語」(2018 年~)も、平野のライフワークとしてのプロジェクトといえます。
亡くなった愛犬の遺骨が納められた骨壺を CT スキャンし、3D プリンタで出力した遺骨を硝子や陶磁に作品化した「変身物語」は、喪失した存在をいかに現実世界に留めておくのか、その永遠化の試みを実践したものです。パート・ド・ドヴェールという古代メソポタミア発祥のガラス工芸テクニックを用いて(またはセラミックにより)、遺骨の一部を蘇らせます。丹念な作業によって「変身」を遂げたその姿は、深い闇の中から照らし出されたように、神々しく、記憶のモニュメントとして立ち現れます。
本展では、2018 年から続くプロジェクトに、新たなにプロセスが加わり、拡張した「変身物語」を発表いたします。遺骨のレントゲン写真に加え、頭蓋骨を描いたドローイングや、3D プリンタ出力の樹脂製の骨のパーツを構成し、一体の犬の姿を象った写真作品などが新作として展示されます。「変身物語」という作品タイトルは、古代ローマの詩人オウィディウスの同名の著書より引用されました。同著書、冒頭のラテン語テキストを題材とした新作も展示します。是非ご覧ください。
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5 年間の闘病の末 2015 年に亡くなった愛犬の遺骨は、火葬の後に納骨せず、未だ実家の居間に置いてある。火葬の時、家族と触れたあの小さく美しい遺骨をもう一度見たいが、骨壷の中には辛くも幸せだったあの時間の空気が詰まっているようで、その蓋を開けることはできなかった。開けてしまえば、あの時間を失って二度と戻れないだろう。
私は 2018 年のある日、骨壷が入った骨箱ごと CT スキャンを撮ることにした。スキャンデータを元に遺骨の3Dデータを作成し、3Dプリンタで出力する。出力した樹脂製の遺骨を型取りし、様々な素材に変身させる。例えば硝子に、例えば陶磁に。その記憶も何もかも、死を境に失うものばかりだった死者に纏わる一切が、これを機に増幅していく。様々な素材に触れ美しさをそのままに変容する姿を見て、私は私自身の変化も受容できるように思えた。
現代の葬制は死を日常生活から遠ざけ、やがて死者は社会に実在しなくなった。重い墓石のなか、骨壺のなかに覆い隠された死者を、私の葬法で繰り返し変身させ、私は死者を失わない。その変身の過程を見せる物語である。 — 平野真美
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平野真美 | Mami HIRANO
1989 年 岐阜県出身。2014 年 東京藝術大学大学院美術研究科修士課程先端藝術表現専攻修了。
闘病する愛犬や、架空の生物であるユニコーンなど、対象とする生物の骨や内臓、筋肉や皮膚など構成するあらゆる要素を忠実に制作することで、実在・非実在生物の生体構築、生命の保存、または蘇生に関する作品制作を行う。不在と死、保存と制作、認知と存在に関する思索を深め、現代の私たちはいかにそれらと向き合うのかを問いかける。
近年の主な展示として、「南飛騨 Art Discovery』(2024 年)、「都市にひそむミエナイモノ」(2023-24年 / SusHi Tech Square)、個展「架空のテクスチャー」(2023 年 / WHITEHOUSE ナオナカムラ)、個展「空想のレッスン」(2023 年 / Maki Fine Arts)、「ab-sence/ac-cept 不在の観測」(2021 年 / 岐阜県美術館)、「2018年のフランケンシュタイン バイオアートにみる芸術と科学と社会のいま」(EYE OF GYRE、2018)、「平野真美 個展 変身物語METAMORPHOSES」(3331 Arts Chiyoda、2021)など。