2017年10月 8日 - 11月12日
オープニング・レセプション:10月8日(日)15:00 - 18:00
Maki Fine Artsは、ビル取り壊しのため、新スペース(新宿区西五軒町)に移転し、10月8日(日)より、豊嶋康子 個展「四角形」を開催致します。
豊嶋康子は1967年埼玉生まれ。1993年東京芸術大学大学院美術研究科油画専攻修士課程修了。
近年の主な展覧会として、「資本空間 -スリー・ディメンショナル・ロジカル・ピクチャーの彼岸 vol.1 豊嶋康子」(2015年/gallery αM)、「MOTコレクション コレクション・オンゴーイング」(2016年/東京都現代美術館)、「第9回恵比寿映像祭 マルチプルな未来」(2017年/東京都写真美術館)など。
豊嶋は、日常社会の制度や仕組みを批評的に捉え、人間の思考の「型」を見出すことをテーマとして、作品を発表してきました。Maki Fine Artsでは初となる本展で、最新シリーズ「四角形」より約12点を発表します。是非ご高覧ください。
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「分身する形態」
勝俣涼(美術批評)
合板上に彫り残された領域が形づくる「矩形」は、合板自身の形態でもある。豊嶋康子の近作が展開する、この矩形の内的な反復は、合板特有の多層構造を活用することで得られている。上層/下層の互いに異なる色味のコントラストが、レリーフ的な起伏をともなって可視化される。こうした原理により、一枚の合板は複数の矩形へと分割される。
矩形の複数化というこのプロセスを通じて、元々の合板の矩形(支持体の形態)と、彫りの造形によって表現された矩形(支持体の内部に展開される形態)とが、注目すべき関係をなす。というのもそこでは、通常ならすでに自明の基底として、あえてそれ自体が問われることもなく透明化している支持体の形態が、それと同形のフォルムの内在的な反復によって相対化されているからだ。つまり支持体の矩形はここで、一つの絶対的な基底という地位を揺るがされている。
ところで、浮き彫りされた矩形が「浮いている」といえるのは、たんにその物理的な凹凸という意味にかぎられない。元々は合板全体の形態=支持体の形態と一致していた表層であり、いまや彫り残された領域としてある矩形は、まるで所属していた元の基礎から幽体離脱するように、合板が定位する軸から逸れ、角度をずらして旋回する。この効果は、矩形という「共通の形態」においてそれらを分身 - 分配させてこそ、実現されえたものだ。絵画的な形式概念を支える矩形はその分裂を通じ、統合を解かれて反省的に問い直され、別の秩序へとアップデートされる。そこにあるのは、複数の層がモザイク状に交錯する、可塑的な厚みを備えた場にほかならない。
豊嶋康子「四角形」
Yasuko Toyoshima "Quadrilateral"
2017
合板・オスモ塗料 / Plywood, Osmo color
60.5×45.5×3cm
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