水戸部七絵「I am a yellow」

2019年11月23日 - 12月22日

オープニング・レセプション:11月23日(土)18:00 - 20:00

Maki Fine Artsでは11月23日(土)より、水戸部七絵 個展「I am a yellow」を開催します。Maki Fine Artsでは初めての個展となります。是非ご高覧下さい。

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イエローでホワイトで、ちょっとブルー*
副田一穂(愛知県美術館学芸員)

 イタリアの作家レオ・レオニの、『あおくんときいろちゃん』という絵本がある。長く愛されているベストセラーだから、きっとどこかで目にしたことがあるかもしれない。擬人化された青色の円と黄色の円が、一つに重なり合って緑色になる。すると、周囲から見知らぬ人扱いされてしまう。この物語は、厚みのない透明なフィルムがピタリと重なり合うように、どちらが上でどちらが下とも区別しがたい色面の、相互に優しく浸透していくさまを見事に描き出している。
 水戸部から「I am a yellow」という今回の個展のタイトルを聞いたとき、真っ先にこの(ある意味では水戸部の絵具の使い方とは真逆な)レオニの絵本が頭に浮かんだ。同書は、レオニ本人の意図はともかく、減法混色の平易な解説としても読めるし、肌の色の違いなどに基づく人種概念に起因する差別についての物語という解釈も許容する。18世紀後半、市民階級にまで広く普及した旅行による観察を裏付けようと、顔のパーツの配置から性格や感情を読み取る疑似科学(観相学)が、人種概念を容れはじめる。そのときに重視されたのは、額から上唇へと伸びる横顔の稜線のかたちであった。
 画家=鑑賞者と向き合うモデルの肖像画は、ふつう横顔を持たない。だが、水戸部の肖像画はそうではない。アメリカのポップ・スターやセレブリティの整った「理想的な」顔が、柔らかな絵具の頭骨と、鮮やかな色の肌によって置きかえられていく。横顔の稜線は、いつしか絵具の波でかき消されている。

*本テキストの題は、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社、2019年)から採った。

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水戸部七絵 / Nanae Mitobe
神奈川県生まれ。2011年名古屋造形大学造形学部洋画コース修了。現在、千葉を拠点に活動。近年の主な展示として、「高橋コレクション展 アートのふるさと」(2019年/鶴岡アートフォーラム)、「高橋コレクション 顔と抽象―清春白樺美術館コレクションとともに」(2018年/清春白樺美術館)、「アブラカダブラ絵画展」(2017年/市原湖畔美術館)、個展「APMoA, ARCH vol.18 水戸部七絵 DEPTH - Dynamite Pigment -」(2016年/愛知県美術館)、個展「水戸部七絵」(2016年/gallery21yo-j) 、個展「ABRAHAM」(2014年/LOOP HOLE)など。

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